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スタッフ日記

2020年 4月 19日
「アムールトラの赤ちゃんについて(続報)」

お知らせでもお伝えしましたが、4月15日にアムールトラのローラが3頭の仔を出産しました。

出産後は3頭ともよく動いており、全頭乳房への吸い付きも確認できていましたが、残念ながら3頭のうちの1頭について、17日に死亡が確認されましたのでご報告いたします。


【死亡までの経緯】

死亡した仔について、出産日の夜頃から、仔の動きが極端に鈍くなる、乳房への吸い付きがほぼ見られなくなる等の衰弱の兆候が見られました。

この時点で他の2頭と比べると明らかに衰弱状態ではありましたが、ローラはしっかりと仔の面倒を見ており、衰弱している仔に対しても身体を舐めたり、咥えてお腹の近くに寄せたり等しっかり世話をし続けていたため、そのままローラに任せるという判断をいたしました。

衰弱が見られた仔は16日の深夜に一度乳房に吸い付く行動が確認できましたが、それ以降はほとんど自力での移動等がなくなり、ローラが舐めたり咥えて移動させた場合だけ反応して僅かに動くという状態でした。

16日のお昼頃までは同様の状態が続いていましたが、同日夕方頃にはローラの舐める等の行動に対しても全く反応が見られなくなりました。(おそらくこの頃には既に死亡していたと推測されます。)

仔の動きが確認できなくなった後もローラは世話を続けていたため、仔の回収はせずそのままローラに一任することとしました。

翌日17日の午前中頃までは今まで通り他の仔同様世話を続けていましたが、17日の午後から死亡した仔を咥えて運ぶ、しきりに舐める等の行動が頻発するようになり、17日の夕方にローラが死亡した仔の亡骸を食べて処理したため、この時点をもって死亡確認といたしました。



【よくあるご質問】

Q.衰弱が確認できた時点で仔を保護して治療しないの?

A.状況にもよりますが、基本的には人間の干渉は極力避け、母親に任せるようにしています。

動物の育児は原則、人が手出しをせず母親に任せるのが最良だと考えています。

アムールトラの場合、たとえ治療のためであっても、一度仔を母親から取り上げてしまうと母親はその時点で育児を放棄し、その後仔を返しても拒絶してしまうことがほとんどです。
そのため仔を母親から取り上げる際には、その仔が仮に助かっても人工哺育(人間が代わりに育てること)になる可能性が非常に高くなります。

人工哺育で育った個体は無事に成長しても、本来は母親や兄弟等と接するなかで身に付ける社会性などを十分に育むことができない場合があり、大人になってから他のトラを怖がってしまい他の個体とコミュニケーションを取れない、繁殖行動が上手く行えない等の問題を抱えてしまうことが多いため、慎重に判断しなければなりません。
(出産後に母親が死亡してしまった、仔は元気だが母親が育児放棄をしている、母親の母乳が全く出ていない等、母親側に問題があるケースなどのやむを得ない場合に、苦渋の選択で仔を母親から取り上げて、人間が育てる人工哺育に切り替える選択をすることもあります。)

また仔に既に衰弱兆候がある場合、仮に人間が仔を取り上げて保護しても、助からず死亡してしまうことがほとんどです。

今回の場合、ローラ自身は仔に対してしっかり育児を続けていて何も問題がなかったことと、無闇に人間が介入すると順調に生育している残りの2頭を含めた育児自体に影響が及ぶ危険性があること等を踏まえて総合的に勘案し、衰弱している仔が死亡してしまう可能性を考慮しても、このままローラに任せておくべきだと判断して仔の取り上げは行いませんでした。


Q.仔が死亡してしまった原因はなに?

A.実際のところは分かりませんが…

アムールトラのように産仔数が多く、仔が未熟な状態で生まれてくる動物は、仔が出産過程で衰弱してしまったり、生まれつき弱い個体が出産中・産後に死亡してしまうことは珍しいことではなく、自然でも普通に起こりうることです。
今回は死亡した仔の回収はしていないため、解剖による死因特定は行なっていません。
そのため実際のところは不明ですが、産後の仔の衰弱状況から推測すると、上記のようなものである可能性が考えられます。

出産は母親にとっても生まれてくる仔にとっても命懸けのものであり、残念ながらその過程で命を落としてしまうケースもあるということも、出産という過程には含まれることをご理解いただければと思います。



Q.死亡した仔を回収せず放置するのはなぜ?

A.死亡した仔の後処理も含めて、母親が自分で行ってくれるのが一番であるため、仔の回収は行いませんでした。

今回、16日の夕方頃には衰弱していた仔の動きが確認できなくなり死亡が推測されましたが、この時点ではローラはまだ死亡した仔に対しても世話を続けていました。
この段階で死亡した仔を取り上げてしまうと、たとえその仔が死亡していても、ローラにとっては「自分の仔を奪われた」ことになり、育児そのものに悪影響が出たり、ストレスを与えてしまう可能性があります。
母親が自分でその仔が死亡していると判断し、どこかで区切りを付けてくれるのが最善であるため、仔の死亡が推測された後も亡骸の回収はせず、ローラに任せてそのまま放置しました。

なお、今回はローラが最後までしっかりと対処してくれたので問題はありませんでしたが、母親が死亡した仔を完全に放置したままにしたり、放置することで何か別の問題が発生する可能性がある場合には、動物園では人間が死亡した仔を回収することもあります。


Q.死亡した仔を食べてしまって大丈夫なの?

A.母親が死亡した仔を食べるのは正常な反応です。

トラ等の動物が育児中に仔が死亡してしまった際に、母親が死亡した仔を食べるのは自然でも普通に見られる行動であり、正常な反応です。
これは死亡した仔をそのまま放置してしまうと、臭いで外敵をおびき寄せてしまったり、亡骸が巣穴の中で腐敗して汚染され病気の原因等になってしまうため、それらを防ぐために母親が仔の亡骸を食べて処理しているのではないかと考えられています。

人間の目には残酷に映るかもしれませんが、厳しい野生の世界では、自身や他の生存している仔を優先しなければ生きていくことができません。
こういった行動は厳しい自然を生き抜くために動物達が備えている習性であり、ローラが母親としてしっかりと対処してくれたということでもあるので、ご理解いただきますようお願いします。

なお、亡くなった仔を食べることで母親の健康面に影響が出ることは基本的にはありませんので、その点はご安心ください。





以上、仔の死亡についてでした。
残念ながら衰弱していた仔はそのまま死亡という結果になってしまいましたが、ローラは最後まで母親としてしっかり対処をしてくれました。
初めての出産という状況のなか、これまで何の問題もなくしっかり母親として行動してくれているので、この先も基本的にはローラに任せて見守りたいと考えています。

また、生存している残りの2頭については、動きも活発で授乳等もしっかり確認できています。
現在のところ問題は見られず順調に生育していますので、これから先も暖かく見守っていただければ幸いです。


【↓授乳中のローラ】

【↓仔の身体を舐めて世話をしているローラ】

【↓全員爆睡中】


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