スタッフ日記
「冬のユキヒョウだより〜仲良くなり…ました?編〜」
皆さんあけましておめでとうございます。
今年も浜松市動物園&コハクとリーベ他、浜松の動物達をよろしくお願いします!
さて、年明け1発目のユキヒョウ達の近況報告です。
前回の記事でも書いた通り、ユキヒョウのコハク(オス)とリーベ(メス)は繁殖を目指して取り組んでいます。
ユキヒョウの繁殖期は冬ですが、2頭が馴れるのに時間がかかる可能性を考慮し、本格的な繁殖シーズンに入る前の11月から同居訓練を実施していました。
早いもので、あれからもうすぐ2ヶ月が経とうとしています。2頭はどんな様子だったのか、これまでの経緯を簡単にご紹介します。
まず、同居訓練開始から約1ヶ月間。
開始時点から、基本的に
・リーベはコハクの方に行きたい
・でもコハクは怖いから逃げる・威嚇する
といった状況が続きます。
※コハクはとても臆病でビビりな性格です。
同居訓練も実施のタイミングや時間帯を変えてみたり、訓練時間を長くしたり短くしたり、数日柵越しでの顔合わせに戻してから再トライしてみたり、コハクにご飯をあげてから同居させてみたり、と思い付く限り色々工夫してみましたが、やはり中々進展しません。
ですが日進月歩、コハクも日々頑張っていまして、本当に少しずつ馴れていっているような様子でした。
同居訓練開始から1ヶ月後の時点で、1mくらいまでならリーベに近付かれても飛んで逃げなくなる、ごく稀にコハクからリーベに近付く(なおその後は自分から飛んで逃げる模様)といった状態までは進歩しました。
正直、一般的なオスの反応と比較するとスムーズとは言い難いですが、そもそもコハクは移動してきてから浜松の環境に馴れるのにも半年くらいかかったほど繊細な性格なので、それを考えると充分頑張ってくれていると思います。
状況が動いたのは12月下旬、リーベに今季最初の発情がきました。
リーベの行動・様子と、札幌市円山動物園から伺った円山での発情時の様子などの情報を踏まえて、昨年までと変わらない強い発情であると判断しています。
これで懸念事項のひとつであった「リーベの発情が今年もしっかりと来るかどうか」についてはクリアしたのでホッとしつつも、問題はコハクです。
リーベの発情がきても、コハクは相変わらず ビビりまくり(-_-;)
リーベの発情には反応しているようですが、怖さを払拭しきれていないので余計落ちつかず、ずっとソワソワしているような状態でした。
リーベが頻繁にアピールしますが、コハクは逃げるだけで進展なし。
予想はしてましたが、発情が来てコハクの態度がコロッと変わる可能性に少しは期待していたので「やっぱりダメかー…⤵︎」としょんぼりしつつ、これからどうするかなぁと今後のペアリングの進め方に頭を切り替えようとしていたら…。
発情6日目、なんとマウントしました。
(マウント→交尾姿勢を取ること)
…目を疑うとはまさにこの事で、しばらく目の前の光景を現実として受け入れられなかったです( ゚д゚)←こんな感じ
マウントは、コハクから近付いたワケではなく、リーベが上手く立ち回って、強引にコハクの下に潜り込んで交尾姿勢に持っていくような流れで成立しました。
コハクも、本能的に体が動いたのか、マウント姿勢になってからはしっかりと交尾行動を取っていました。
まぁ、一連の流れが終わると即座に飛び退いて逃げていましたが…。
1度マウントが出来てからは、リーベが同じようにコハクにアプローチして、コハクもそれに応えるような感じで割とスムーズにマウントまでできるように(終わったら飛んで逃げるのは変わらず)。
結局、リーベの発情が終わるまでの数日間の間に、50回近くはマウントが成立しました。
姿勢だけで交尾まで至っていないだろう、という時もありましたので、50回のうち完全に交尾が成立したのがどれくらいかは中々判断が難しいですが、最低でも数回以上は交尾に成功しているのでは、と考えています。
正直なところ、1回目の発情で交尾までできるとは思っていなかった(1回目の発情中にある程度仲良くなって、2回目の発情から勝負のつもりで考えていました)ので、リーベのアプローチの上手さ&コハクが怒っても気にしない懐の深さと、コハクのいざという時には決めてくれる強さに飼育員もただただ驚かされています。
(というか、あまりにも現実感がなさ過ぎて数日は「アレ夢では…?」と朝起きて自分の記憶を疑ってました。)
驚きやら嬉しさやら邪魔しないように息潜めてたやらで写真を撮り忘れたので画像がないんですが、リーベの立ち回りがホントに、本当に上手かったです。見ていて感動すら覚えました。
今回臆病なコハクが交尾までできたのは、もちろんコハクの勇気もありますが、間違いなくリーベのおかげだと思います。
という訳で、2頭の頑張りのお陰でとりあえず交尾まで無事に至ることができました。
もちろん交尾が成功しても、残念ながら妊娠に至らない場合もあります。
運の要素も絡みますのでこの先は未知数ですが、最低限この2頭のペアの繁殖を目指して、今シーズン中にさせてあげたかった事は一通りクリアできたのではないかと思っています。
それに、ユキヒョウの繁殖シーズンはまだ始まったばかり。
今回の交尾が不成立に終わったとしてもまだチャンスはありますので、初回の発情で交尾までできるようになった事はかなり大きなプラスだと思います。
(ユキヒョウの発情は、7〜10日間程度の発情が3〜4週間おきに、シーズンを通して合計3〜4回来ます。)
また、仮にコハクとリーベが繁殖に結び付かなかったとしても、コハクが「交尾経験のあるオス」になったことはこの先の強みになりますので、とりあえずどちらに転んでも、今回の件は実りのある経験になったと思います。
さて、そんなこんなで激動の12月でしたが、タイトルにも「?」が付いている通り、じゃあコハクが完全にリーベに馴れたかというと、実はそうではありません。
発情中の諸々でだいぶリーベを許容できるようになり、発情が終わってからもコハクから匂いを嗅ぎに行ったり、すれ違ってもあまり飛び退かなくなったりはしましたが、まだ怖さもあるよう。
リーベから向かってくると怖くて逃げたり、リーベがしつこく構って構ってすると、ガウガウ怒って嫌がったりもします。
この頃ようやく日中同じ空間にいても、離れていれば少しは眠ることができるようになりましたが、それでも落ちつかずウロウロしている時間が大部分です。
リーベは気にせず爆睡してますが( ˘ω˘)スヤァ…
最低限、同居してもトラブルの危険がほとんどなくなったというだけで、コハクがしっかり馴れるまではまだまだ時間がかかりそうな感じです。
頑張れコハク・・・(+_+)
今後の展示については、コハクの当日の朝の状態を見て、同居させるか別々にするかを判断します。
まだまだ毎日同居にするとコハクの負担が大きそうなので、適度に同居する日と別々の日を織り交ぜていく予定です。
とりあえず、現状の馴れ度合いでも交尾までできることが分かり、あまり焦る必要もなくなりましたので、これから先はコハクのペースに合わせてゆっくり馴れていってもらおうと考えています。
この記事を書いている時点では、1週間のうち半分同居、半分別々といったぐらいの割合です。
同居については当日の2頭の様子で判断するため、事前のお問い合わせではお答えできない場合がありますが、ご理解をお願いいたします。
(なお同居中は獣舎の中を通って、2つの運動場を自由に行き来できるようにしています。見えにくい場合がありますがご了承ください。)
ではでは、今後ともコハクとリーベをよろしくお願いしますね。
ちなみに、昼間は寝てることが多いので、動いているところを見たい方は朝と夕方の時間帯がオススメですよ!