スタッフ日記
「アムールトラ「ルー」の思い出」
2010年5月27日、当園のアムールトラ「ルー」が亡くなりました。
1995年9月21日、閉園時間を過ぎてあたりも暗くなった頃、3歳のオスのトラが到着したと聞き、駆けつけました。輸送箱に居た姿を見たのが私と「ルー」との最初の出会いでした。中をのぞいて「大きなトラだな」それに「よく落ち着いているな」と感じたのを今もはっきり憶えています。
その10年後、「ルー」の飼育担当になり改めてじっくりみるとネコ科最大のアムールトラに相応しい大きさがあり、さすがに3歳当時の若々しさはありませんが、ゆったりとした動作は堂々としたものでした。
「ルー」の性格は、穏やかで、めったに威嚇したり攻撃的な表情は見せませんでした。2006年3月15日メスの「ミー」が来園しました。2頭で柵越しの見合いを始めると、すぐに互いにトラの挨拶行動の「ブフフフ・・・」という鼻鳴らし音を発しました。2頭の相性は良くすぐ同居をはじめました。予想通り挨拶行動を行い、顔をすり寄せ合います。ところが「ミー」は子供で、母親に対するように、突然「ルー」にじゃれついて向かっていきます。「ルー」が相手をすると、「ミー」は怖くなり(母親の反応と違うため)怯えて、急に攻撃的に威嚇するという不安定な動きでした。この時オストラが少しでも神経質な反応をすると、闘争になる危険があります。しかし「ルー」は過剰な反応をせず、落ち着いた動きで、「ミー」を追い詰めないで、この後も順調に同居を進めていけました。
まだ幼い「ミー」に優しく時に少し怖く大人の付き合い方を教えてくれました。
「ルー」は日課で、朝放飼場に出ると、決まって放飼場を一周しながら、壁等に尿をスプレーして匂い付けします。亡くなる前に体調が落ちてきても、放飼場に出たがり、頑固に自分の生活リズムを続けましたが、しだいに寝ている時間が長くなり、室内で生活するようになりました。気力を失わないように「ミー」部屋までのドアをあけておきました。亡くなる前日まで部屋を移動して、最後まで必死に生きようとする力を感じました。
最後になりますが、「ルー」が高齢で体調を崩し、多くの来園者から励ましの声をいただき改めて、多くの方に愛されていることを感じました。子供が残せなかったのが大変残念です。あたたかく見守って、最後まで可愛がって頂きありがとうございました。 (飼育員 加藤)